記憶を綴る家

〜ハ丁平のアトリ工住宅〜

「港を一望する恵まれたロケーションと融合し、心のゆとりと想像力を喚起するする空間」がコンセプト。
構成は至ってシンプルに、空間のポリューム・色彩も、ムダな虚飾を一切排除。生活者に不用意な刺激を与えないよう配慮しました。家の中心にはオブジェを兼ねた白い螺旋階段を配置。ONAの二重螺旋構造を模した、将来にわたって「記憶を綴る装置」と位置づけました。

設計段階には社内でも賛否両論がありましたが、「設計者としての挑戦」「内池建設でもこんな住宅を設計するんだ」ということを示したかったのです。「刺激を与えない」つもりが、かえって周囲を刺激してしまい、設計担当者自ら購入を決意〔最初からそのつもりだったりして…〕。実は私が住んでます。お近くにお越しの際は是非お立ち寄り下さい。

2005.6.10追記

当時、巷では、とりあえず色分け、とりあえず装飾、とりあえずかっこ良く…といった「張りぽてデザイン」が多かった中、私の頭の中は「飽きが来ず、変化に柔軟に対応し、長く使い続けられ、価値の下がらないデザインとは何だろう?」「世間から“邪魔な建物”と噂されないテザインとは何だろう?」と自問し鬱々とする日々…。

この家は、設計者が一生かかっても明確な回答が出せない究極の命題に対して、その時点での知力と財力を以て得た回答でした。

さて、住んでいると、使い勝手や家族構成の変化など想定内ではあっても思惑通りにならないことが殆どである現実を体感している訳ですが、今のところ不自由や、家族からの文句が出ていないことを基準にすれば、まずは及第点であったかと思います。

「シンプル・モダン」は、大手ハウスメーカーの商品化、有名建築家とのコラポレーションなど今や巨大なマーケットです。この家を設計、建簗した2002年以降、多くの地元ハウスメーカーもこのデザインを取り入れてきました。これは、流行や一過性のものではなく多くの人に受け入れられやすく使いやすい普遍的(ユニパーサル〕デザインであるためだと思います。今後もこの系統の住宅は、少しずつ変化しながら、時代に適応し、増えていくのではないでしょうか…。